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 平成29年10月1日現在、日本の総人口1億2,671万人に対し、高齢者人口は3,515万人と27.7%となり[1]日本人の4人に1人は高齢者です。 今後も高齢者人口・高齢化率は上昇し続け、2065年には38.4%に達し、約2.6人に1人が高齢者になると予想されています。[2]
 
 現在、高齢者のうち介護が必要であると認定されている、要介護認定者数は平成29年12月現在およそ465万人となっています。[3] つまり、日本人の27人に1人は要介護者です。寝たきりや認知症などの要介護高齢者の増加、介護の長期化など、介護の必要性や重要性がますます高まり、介護する側の高齢化なども深刻な問題となっています。
 
 1.1 社会保障費の急増
 
 平成28年度の調査では、介護サービス・介護予防サービスの年間受給者数は614万人、介護サービスの年間費用は4581億円、介護予防サービスの年間費用は9兆2343円となりました。[4] 介護保険の総額は10.4兆円にのぼり、国の社会保障給付費118兆円の8.8%を占めています。[5]
 
 介護保険の総額は2006年以降、年間数千億円単位で増加し続けており[6] 、今後も高齢者人口の増加に伴い、介護費用は増え続けることになります。
 
 1.2 介護施設の不足
 
 
 要介護状態は、症状の度合いに応じて1~5の5段階で判定されます。要介護2まで場合は、通所サービスや訪問介護の利用が中心となりますが、要介護3を超えると介護施設への入所が必要になってきます。
 
 介護施設には、「介護保険施設」と呼ばれる社会福祉法人や自治体が運営する公的な施設と、「介護付き有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などの民間事業者が運営している施設があります。
 
 公営の介護保険施設には、「介護老人福祉施設」、リハビリを中心とした「介護老人保健施設」、長期入院して療養する「介護療養型医療施設」の3種類があります。いずれも、要介護認定を受けた人が対象です。平成28年現在、介護老人福祉施設が 7,705施設(定員)、介護老人保健施設が 4,241施設、介護療養型医療施設が 1,324施設となっており、合計するとで13,370件、受入れ定員数は約150万人です。[7]
 
 現状では公営施設の定員を超える需要があり、公営施設に入所できないため、公営施設より高い費用を支払い民間事業者の施設に入所する人も多くいます。
 
 1.3 介護人材の不足[8]
 
 2012年の調査では、介護職員のうち訪問介護に従事する人は約42万人、施設介護に従事する人は約111万人おり、合計すると153万人が介護職員がいます。2000年からの12年の間に約3倍近くに急激に増加していますが、需要も急激に増加しているため、介護事業所の6割が人材不足となっている現状です。また、2025年には240万人強の介護職員が必要と推計されており、今後も介護人材は増やしていかなければなりません。
 
 また介護職は、誰かの役に立てるやりがいや社会貢献ができるため肯定的なイメージもある一方で、身体をつかうハードな仕事であることや、給与が低いことなどが原因となり離職率が14~18%と高い業種であり、このことが就労の妨げにもなっています。
 
 

日本人の健康寿命(健康でいられる年齢※平成22年時点)と寿命を比較すると、男性の場合は10.58歳(80.98-70.42)、女性の場合は13.52歳(87.14-73.62)の差があります。[9][10] つまり統計上、健康に問題がある状態で、およそ10年を過ごさなければいけないことになります。そのため、この10年の間は何らかの介護サービスを受けることになりますが、介護の需要に対して、施設も人材も不足しているのが現状です。介護が必要なのにサービスを受けられない介護難民が、間もなく首都圏を中心にあふれてしまう事態になるといわれています。
 
 介護難民をはじめ、介護が必要な状態であるのに介護サービスが受けられない状態が続くと、介護する側に負担が集中してしまい、介護離職や介護疲れによる自殺という深刻な事態をまねいてしまいます。
 
 
 しかし、適切に介護サービスが受けることができるように介護サービスを拡充させる場合、急増する介護費用により国家の社会保障費が拡大して財政破綻してしまいます。国だけのサポート(公助)でこの介護問題を解決しようとする場合、年金や保険の給付を抑制して財政支出を削減したり、消費税アップなど増税することにより収入を増やすなど、いずれにせよ国民の負担増が避けられません。
 
 
 「介護難民問題」に、どう対処すればいいでしょうか。
 

介護問題を解決するには、「介護施設の不足」「介護人材の不足」そして「介護にかかる社会保障費による財政赤字」という3つの問題に同時に取り組む必要がでてきます。
 
 これらの課題への取り組みのひとつとして、2016年3月に、経済産業省、厚生労働省、そして農林水産省の3省が連名で「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」(保険外サービス活用ガイドブック)を公開しました。[11] 保険外サービスを普及させることで民間事業者が参入しやすくすることで、担い手不足を改善しようというものです。
 
 厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築(自助の充実)、農林水産省はスマイルケア職(新しい介護食品)の普及促進、そして経済産業省は生涯現役社会の実現に資するヘルスケア産業の創出・復興を取り上げ、先駆的な保険外のヘルスケアサービスの取り組みをガイドブックとしてまとめて発信することで、保険外サービスを広げていくことが狙いです。
 
 
 保険外サービスは、人材不足や財源不足を解決するだけではなく、要介護認定を受けていない軽度な人もサービスを受けられるなど介護を受ける側にもメリットがあります。保険外サービスは魅力的な解決策ですが、「介護保険を適用できない介護サービス」であるため、介護にかかる費用は全額利用者が負担しなければなりません。あえて介護保険が使えるのにお金を払うということが、現状では大きなハードルになってます。
 


 
 介護の保険外サービスは、家事代行、宅配食サービス、見守り・安否確認など様々です。
 
 近年、自治体では保険外サービスを普及させるための国レベルの動きに連動して、保険外サービスを提供する民間事業者を支援する動きができはじめました。ここでは、2つの事例を紹介します。
 
 4.1 福岡県福岡市:保険外サービスに関する情報提供サイト[12]
 福岡市では、福岡市のWEBサイトの中で、家事代行など保険外サービスを検索できるサービスを開始しました。「介護保険の認定を受けている人は一部なので、こういうものが必要では」と見込み、このシステムが導入されました。
 
 4.2 愛知県豊明市:民間事業者との連携協定締結[13]
 
 高齢化率が24.7%にのぼり今後も高齢化率が著しく増加することが見込まれている愛知県豊明市では、民間事業者9社と、地域で求められる保険外サービスを創るための協定を結びました。サービスを必要とする高齢者とサービスを手依拠する民間事業者を、自治体が仲立ちして情報交換を行うことで、消費者のニーズにあったサービスを創出するとともに、品質と価格のバランスの取れるような仕組みが作られています。

このように、介護問題を解決するための一つの手段として、介護の保険外サービスへの支援が進みつつあります。
 
 5.1 介護保険外サービス市場の障害[14]
 
 介護保険施設をはじめとする介護サービスは人が実際に体を動かす作業ベースのサービスであり、マスプロダクトのように大量生産によりコスト削減を行うことが難しいため、1顧客にかかる施設費・人件費を削減することは難しいと考えられます。国による支援が切り離せないと考えられます。
 
 一方で、要介護2以下の軽度者を対象とする訪問介護などのサービスや、介護を予防するためのサービスの一部は、仕組みづくりを行うことで利益を上げやすい事業もあます。実際に、佐川急便、ヤマトなどの大手の民間事業者は家事代行事業への参入を始めています。複数の大手企業が参入してくる激戦市場といえます。
 
 5.2 ソーシャルビジネスの展開予測
 
 以上のデータから、この問題をソーシャルビジネスの力で解決していくプロセスの予測は以下の通りです。
 
 家事代行などの大手企業が参入してこない保険外サービスは、仕組化による低コスト化が難しい分野となりますが、地域密着型の中小企業や個人事業主にとっては参入しやすくなります。
 
 例えば、福祉大国である日本では「病気になっても病院に行けば高度な医療が受けられる」ため、予防に対する意識が低い現状ですが、今度は介護状態を予防するためのサービスへの需要が高くなることが予想されます。予防事業については、従来の介護サービスとの差別化を図ることで、利用者のサービスの購入意欲が高いことが見込まれるため、民間事業者が参入しやすい分野といえます。
 
 また企業体の規模が小さく資金力に乏しい中小企業や個人事業主がこの事業に参入する場合は、地域の人材と施設を活用し、その地域に住む一人ひとりの小さなニーズ(外出支援、見守り、コミュニティづくり)に柔軟に対応できるような地域密着型の事業のほうが展開しやすいと考えられます。

[1] 総務省統計局,『人口推計 平成30年3月報 (平成29年10月確定値,平成30年3月概算値)』
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201803.pdf
[2] 内閣府, 『平成29年版高齢社会白書(概要版)』
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/index.html
[3] 厚生労働省,『介護保険事業状況報告月報(暫定版)平成29年12月分』 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m17/1712.html
[4] 厚生労働省,『平成28年度 介護給付費等実態調査の概況』
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/16/index.html
[5] 内閣府, 『社会保障の給付と負担の現状(2016年度予算ベース)』
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280915/shiryou3-1-2.pdf
[6] 厚生労働省, 『第57回社会保障審議会介護保険部会資料 参考資料1』
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000122339.html
[7] 厚生労働省, 『平成28年介護サービス施設・事業所調査の概況』
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service16/index.html
[8] 厚生労働省, 『第1回 福祉人材確保対策検討会 資料2』
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000047527.html
[9] 厚生労働省,『平成28年簡易生命表』
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/index.html
[10] 厚生労働省,『健康日本21(第二次)資料1』
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/sinntyoku.pdf
[11] 厚生労働省, 『地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集』
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000119256.html
[12] 福岡市,『福岡市保険外サービス情報提供サイト:ケアインフォ』
https://careinfo.city.fukuoka.lg.jp/public/top
[13] 愛知県, 『平成28年度愛知県地域包括ケアモデル事業中間報告会 』
http://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/227191.pdf
[14] 株式会社日本総合研究所, 『介護保険外サービスの事業化に向けて生活支援サービスは「仕組み」で勝負せよ 』 http://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/8309/

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